木造 聖観音菩薩立像

日本、平安時代末〜鎌倉時代初期(1160〜1250年頃)

寸法:40cm

この木造の聖観音菩薩像は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて制作された日本仏教彫刻の優品です。

制作には「寄木造」という高度な木彫技法が用いられています。この技法では、複数の中空の木材を使い、それぞれの部位を個別に彫刻した後に組み合わせ、最後に全体の細部を仕上げます。これにより、彫刻は軽量化され、修復も容易になり、また短時間での制作も可能となりました。像の肩部や頭部、体側などに見られる継ぎ目や、水晶が嵌め込まれた眼などが、この技法の使用を示しています。 聖観音の姿は、崇高でありながらも簡素です。高く結い上げた宝冠、首飾りや耳飾りがその神聖性を表す一方で、素足に巻きつけるように垂れる衣や腰布は、その慈悲深く人に寄り添う存在であることを象徴しています。右手は「施無畏印」を結び、人々への救済と慈悲を表現し、左手には悟りと清浄を象徴する蓮の花を持っています。

イギリス個人コレクション

平安時代について

「平安」という名称の通り、平安時代は相対的に安定した時期であり、中国(唐)の影響が徐々に薄れる中で、日本独自の文化や宗教観が成熟していきました。仏教においては、密教的性格を持つ天台宗や真言宗がこの時代に確立されました。天台宗はすべての生きとし生けるものが仏になれると説き、真言宗は儀式・印相・呪文による即身成仏の可能性を重視しました。 

 

菩薩と観音について

菩薩とは、仏陀となる道を歩みながら、他者を救うためにあえて悟りの完成を遅らせている存在です。観音菩薩(カンノン)は、苦しむ人々に手を差し伸べる菩薩として、日本仏教において極めて重要な位置を占めています。その中でも「聖観音(しょうかんのん)」は、観音の中で最も人間に近い姿をとる形態であり、しばしば阿弥陀如来とともに表され、慈悲の象徴として崇拝されます。また、大勢至菩薩(だいせいしぼさつ)と三尊形式で並ぶ場合には、観音は慈悲ではなく智慧の象徴ともなります。